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平成三十年度卒業証書授与式

式辞

 

 草の戸も住みかはる代ぞ雛の家

 

 松尾芭蕉が「奥の細道」の旅に出発する時、詠んだ句であります。おそらく三月三日のひなの節句前後の句でありましょう。

 今まで住んでいた隅田川の粗末な家をひな人形がかざられる、女の子のいる家族にゆずり渡し、当時未開の地であった東北、北陸へ旅立つ孤独な俳句修行への決意がうかがわれます。

 ただ今本校を卒業される皆さんに卒業証書をお渡ししました。今日の日をどれだけ心待ちにしておられたことか、保護者の皆様方の御心中を察し、また、御苦労を思い、心からお祝い申し上げます。

 今日は皆さんの門出をお祝いするために、多度津町長の丸尾幸雄様、多度津町教育委員会教育長の田尾勝様、香川県議会議員の新田耕造様をはじめ、出身中学校や道院やスポーツ少年団から先生方がお見えになっています。また、京都から少林寺拳法を正課とする京都広学館高校の校長中西伸也先生がかけつけてくださいました。部内からは各代表顧問幹部の先生方にご出席いただいています。

 在学中の御厚情に対し、皆さんとともに感謝申し上げたいと思います。

 また、教職員一同は、本校の教育を修了された皆さんを社会に送り出すことができますことを誇りに思いますと同時に、これからの皆さんの前途が光り輝くことを願い、心から祝福をおくるものであります。

 さて、思い返せば三年前、禅林学園高等学校の真新しい門をたどたどしい足どりで潜ってこられました。

 今皆さんの脳裏には、入学以来、学園での日日の思い出が走馬灯のように去来し、感無量の思いで一杯であろうと思います。

 これから皆さんが足を踏み入れる社会は、かつてない少子化、高齢化、労働者人口の減少というゆゆしき事態に直面することになります。

 今までの我々の経験則が通用しない時代が間近に迫っています。考え方も心のあり方も根本からリセットしなければなりません。

 高齢者が増え、少子化がすすんでゆけば、労働力を高齢者に求めるようになります。仕事を終える年齢がひき上げられます。寿命がのびることがこれに拍車を掛けます。

 職業も一生に全く違う仕事を二つ三つとやるようになるでしょう。そして、それをやり抜くためには、まずは健康、そして精神力(心)が必要となります。宗道臣先生は「正しい修養の道は、先ず霊の住家である肉体を養いながら、心即ち霊を修めるものでなくてはならぬ」と心とからだを修養することの大切さを説いておられます。また、さらに

「頭や理屈では説明できても、どうにもならない世の中を我々は生きているということだから、取り越し苦労をするなと、これまでも私は諸君によく言ってきた。どうなるのかという心配などするな、と同時に、ならん先にあきらめるな。どんなにつらいことがあっても、今はどんな逆境にあっても、生きてさえおれば、命さえあれば、人生は必ず変わるのである。変えられるのである。これを自分の信念として叩き込め。あきらめるなよ。これが本気でわかったらな、生きてるってことが、しごく楽になる」と苦境を生きてゆく信念を説かれています。

 これからの時代、みなさん一人一人は貴重な働き手としてそれぞれが担う役割と責任は大きなものがあると思います。

「人間、自分のことができて半人前、他人のことができて一人前」

みなさんがいくら自分の力で生きていけるようになっても、自分のことだけにかまけている限りは半人前でしかないのです。愛する家族や友達のため、世のため人のために役立つようになってこそ一人前なのだと私自身にも常に言い聞かせています。

 宗由貴本学園理事長の「人は人をしあわせにするために生まれて来る」のお言葉をしっかり心にとどめていただきたいと思います。

 西洋のことわざに「三月はライオンのようにやって来て、羊のように去って行く」というのがあります。三月は冬の北風と春の南風とが激しくぶつかる月であります。のどかな日もあれば、一転して春の嵐が吹き荒れる日もあります。みなさんの人生もこの三月の気候のようなものでありましょう。その中でひるむことなく、たくましく堂々と生きていかれることを切に願って式辞といたします。

 

平成三十一年三月三日

禅林学園高等学校

校長 小判 繁樹